散歩　ミュンヘンにおける反宗教改革とプロテスタント

現在ドイツは5800万人以上がキリスト教徒であると認めているが、その半数以上はプロテスタントである。その一方でミュンヘンは街が成立してから現在もまだカトリックが大多数を占めている。しかし、16世紀頃のミュンヘンでは、最初はプロテスタントに対しそれほど反対があったわけではなかった。ミュンヘン市議会でもそれは同じであったが、1521年ヴィルヘルム4世がバイエルンを統治するようになってからカトリックがより強くなり、またプロテスタント的信仰の人々は税金も高く、街から出て行かざるをえなくなった。

当時、神聖ローマ帝国内には宗教改革の波が押し寄せ、バイエルンもその例外ではなかったが、バイエルンを統治するヴィッテルスバッハ家はカトリック信仰を守ることを決断し、大公アルブレヒト5世はイエズス会と協力した。また彼が統治している時代（1550-79年）の1555年、アウグスブルクの宗教和議で、正式に諸侯や都市に信仰の自由が認められるようになった。つまり諸侯や支配者などがその領内の宗教・宗派を自由に決めることが出来るようになった（一般市民には信仰の自由はない）。

イエズス会と協力したアルブレヒト5世は反宗教改革を唱え、それによりミュンヘンはカトリックの精神的な中心地となった。その後1579-90年ミュンヘンを統治したヴィルヘルム5世は反宗教改革の一環として聖ミヒャエル教会を建設した（1597年完成）。この教会はアルプス以北で最も重要なルネサンス教会として建てられ、また教会横にはイエズス会の学校としてアルテアカデミーが建設された。そういった反宗教改革が進められたミュンヘンはその後カトリックのシンボルとして位置づけされていく。

しかし1781年神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世が帝国内での信仰の自由を認め、一般市民も自由に宗教・宗派を選ぶことが出来、カトリック地域でプロテスタントの人が生活出来るようになった。だがドイツ国内ではプロテスタントの権利が認められてきたのに対し、ミュンヘンでは未だカトリック主義の伝統が根付いていた。しかし1799年3月選帝候マックス・ヨーゼフの妻であり、プロテスタントのカロリーネ夫人がレジデンツに住むようになって、ミュンヘンで初めてのプロテスタントの礼拝が同年1799年5月12日、選帝候夫人の部屋で行われた。といってもこの礼拝への参加者は夫人の知人などに限定され、一般市民は礼拝に参加するためにアウグスブルクまで行かねばならなかった。

選帝候がプロテスタントに対し寛容な態度を示していたことで、ミュンヘンに住むマンハイム出身のワイン商人ヨハン・バルタザー・ミヒェルは大きな希望を持った。というのは彼自身もプロテスタントであったが、彼には、貴族生まれで信心深い姉もいた。彼女はミュンヘンに来る際にも説教師を同行させ、レジデンツ内のある部分（現在のクヴィリエ劇場に当たる場所）に礼拝堂を設立してプロテスタントとして行動した。ミヒェルの市民権について、ここでミュンヘン市議会は苦境に陥った。伝統を守るか、ドイツの他の街同様プロテスタント市民を認めるか。

1800年選帝候は非カトリック教徒の勅令を発し、バイエルンに非カトリック教徒の居住を正式に認めた。また1801年マンハイムのワイン商人ミヒェルの市民権について選帝候自身が市議会に強く訴えた。同年7月29日選帝候は署名、翌日30日にミヒェルは470グルデンを納税し、プロテスタントとしてミュンヘンで初めて市民権を得ることが出来た。

これにより多くのプロテスタント教徒がミュンヘンにやって来るようになり、彼らは大きく発展しているバイエルンの、新しく創設された役所などで働くようになった。このことはバイエルン、特にミュンヘンのカトリック主義の終わりを示している。ミュンヘンでもプロテスタントの数は急激に増え、1806年にその数は1200人に達した（当時の人口45000人、人口の37分の一がプロテスタント）。同年12月21日プロテスタント団体が設立され、1833年プロテスタント教徒は彼ら自身の礼拝堂（マテウス教会、ヨハン・ヤコブ・ペルシュ設計）をゾンネン通りに建設した（8月25日完成）。この教会は1938年ドイツ第三帝国の文化政策により取り壊された。

現在のミュンヘンでプロテスタント教徒の占める割合は人口の約25パーセント前後（カトリックは60パーセント前後）。ミュンヘンのプロテスタントの教会の数は50、それに対しカトリックの教会数は153である（その他2つのシナゴーグ、1つのモスク、24の他の宗教の教会がある）。

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